mstk's diary

新聞コラム

編集手帳 料理名「鳩山由紀夫元首相」

 裏稼業に生きる主人公が内心つぶやく。<狼と食事をするときは、自分が客であるのか主料理であるのか、見極めるのが容易でない…>。日本でも評判を呼んだ推理小説トレヴェニアン「シブミ」(ハヤカワ文庫)の一節である。

◆賓客として招かれ、こちらはテーブルを挟んで対等に食事をしているつもりでいても、気を緩めれば食べられてしまう。手ごわい相手と仕事で交渉をする場合の心得としても使えそうである。

◆ご当人は「完全な捏造だ」と憤慨しておられるが、要は<お客>ではなく、<料理>として遇されたということだろう。

イラン大統領府の発表によれば、鳩山由紀夫元首相が大統領との会談で国際原子力機関IAEA)を批判し、核開発を進めるイラン寄りの発言をしたという。鳩山氏の釈明を信じるとしても、相手に利用され、"食べられた”あとで怒っても遅い。日本政府が羽交い締めせんばかりにしてイラン訪問の取りやめを氏に要請したのも、こういう事態を心配すればこそだろう。

◆「期待を裏切らない」という褒め言葉があるが、かくも毎度毎度、「心配を裏切らない」人もめずらしい。