mstk's diary

新聞コラム

2012-01-01から1年間の記事一覧

春秋 アピールの仕方を考える

中国の新しいリーダーとして習近平さんが共産党のトップに立ったのは半月ほど前のことだ。直後から、というよりその前から、10年後に習さんの後を継ぐ候補の名前が取りざたされている。代表格は、中央の指導部の一角に49歳の若さで食い込んだ湖春華さん…

余録 男が女を装い【平仮名】で書かれた土佐日記

「をとこもすなる日記をいうふものを、をむなもしてみんとてするなり」。男が書く日記を女も書いてみようという「土佐日記(とさにっき)」の冒頭だが、「をむなもしてみん」には「をむなもし(女文字=平仮名)」という言葉が埋め込まれているという。 ▲文献…

天声人語 秋の就活戦線

イチョウの黄葉が舞う歩道には、さすがにくたびれた姿が交じる。ダークスーツに白のシャツかブラウス。大学生が最後の一年ほどを託す、会社訪問用の勝負服である。 ▼来春の卒業予定者の就職内定率(10月1日現在)が、前年より約3ポイント高い63%と発表され…

天声人語 春の桜に牧野富太郎を思う

ソメイヨシノは日露戦争の祝勝として植樹され、広まっていったという。それまでは「全国区」とうほどでもなかったらしい。直物学者の牧野富太郎は郷里の高知にまだソメイヨシノがないころ、苗木数十本を送って植えたそうだ。 ▼大の桜好きだったのを、東京西…

産経抄 天皇陛下の葬儀

江戸時代の初期、文武に長じていた後光明天皇(1633~54年)が若くして崩御され、それまでの慣習通り荼毘(だび)にふされようとしたとき、猛然と反対した人物がいる。御所に出入りしていた魚屋の奥八兵衛である。 ▼八兵衛は、御所の人々に「火葬は人…

春秋 小沢一郎民主党元代表の裁判をスタートラインから考える

「裁判について考える」という谷口正孝元最高裁判事(故人)の著書がある。23年前にこの本が出た頃、裁判員裁判も検察審査会の強制起訴に仕組みもなかった。しかし、裁判を考えるスタートラインに戻りたいときは読み返している。 ▼丸めて言うと、たとえば…

余録 現代中国の朋党間の党争

中国の唐の後期、河北で乱があった。時の皇帝文宗は「河北の賊を去るは易く、朝中の朋党(ほうとう)を去るは難し」と嘆いた。反乱は鎮圧できても、朝廷内の党はなくせない。当時は「牛李(ぎゅうり)の党争」という官僚間の権力闘争の最中だった。 ▲中国の…

編集手帳 がんを嗅ぎ分ける犬の嗅覚

いまの京都府、丹波の国で犬が狢(ムジナ=アナグマ)を食い殺したところ、狢の腹から勾玉が出てきた。飼い主が朝廷に献上したと、『日本書紀』(巻第六)にある。犬の名を「足往」(あゆき)という。 ◆狢の体内に宝物のにおいを嗅ぎとったのか、どうか。正…

天声人語 36年ぶり、トキの自然界での孵化の確認に思ふ

日本が「最後の5羽」で人工繁殖に賭けたのは1981年だった。同じ年、絶滅と思われていた中国で「最後の7羽」が見つかる。そこから日中で始まるトキ再生の物語。雨後の草むらに火をつけるような苦闘の先に、小さな炎が揺れ始めた。 ▼新潟県佐渡市で放鳥…

産経抄 起きるべくして起きたクマ牧場での事故

国際的な動物写真家、星野道夫がヒグマに襲われて死亡したニュースは衝撃的だった。享年43。1996年8月、ロシア、カムチャツカ半島で起きた悲劇だ。TBSの番組収録に協力して、現地でテント生活をしていた。 ▼野生動物の生態を知り、用心深い性格でもあ…

春秋 震災世代の視線の先にあるもの

ふだん通勤や通学で使っているカバンの中身や、日ごろ身に着けている普通の物。仮に東京を大災害が襲った時、その中で意外に役立つものは何か。防災を学ぶ催しで、ある特定非営利活動法人(NPO)代表が民衆に問いかけた。 ▼もちろん正解は一つでない。例えば…

余録 進化する脱毛治療

卓越した軍人にして政治家、文人でもあった古代ローマのカエサルは長身で色白、均整のとれた体で口は大きめ、目は黒く炯々(けいけい)と輝く人物だった。スエトニウスの「ローマ皇帝伝」にそうある。 ▲その彼は多くの栄誉を元老院や民会から与えられたが、…

編集手帳 中国のマクベス

シェークスピア「マクベス」でマクベスその人が言う。<ひとたび悪事に手を着けたら、最後の仕上げも悪の手にゆだねることだ><第3幕、福田恆存訳) ◆推測されているように、不正蓄財の悪事に手を染めた以上は”仕上げ”も悪の手にゆだね、口封じの殺人を犯…

天声人語 任命権者の無恥

政治家の失言には「あっけらかん」という部類がある。「個別の事案についてはお答えを差し控える、法と証拠に基づいて適切にやっている。この2つで国会を切り抜けてきた」。そう言い放って辞めた法相がいた。 ▼田中防衛相の国会答弁も二通りしかないようだ…

産経抄 前田国交相の問責決議案

岐阜県下呂市の下呂温泉は草津や有馬とともに「日本三名泉」の一つに数えられる。飛騨川沿いに温泉宿やホテルが立ち並び、あちこちから湯煙が上がる。いかにも日本の温泉町らしい活気があり、テレビ番組でもしばしば紹介されていた。 ▼その下呂市の市長選が…

春秋 政治家の資質

「たかだか」と思う一方で、やはりどうしても気になるので書いておく。衆議院議員宿舎の家賃値下げである。東京の真ん中にある3LDK82平方メートル。その家賃が4月から約8000円下がり、月額8万4291円になったという。 ▼聞けば付近の相場は4~5…

余録 首都高速道路の老朽化

首都高速道路の傷みが激しい。応急手当てでしのいできたが、全面更新が必要になった。東京オリンピックのために造った道路だったが、産業道路と化して過積載の大型トラックがほかの道路以上に走り回っている。 ▲補修を要する損傷が約9.7万件にのぼる。1キ…

編集手帳 男性3人連続不審死事件に思ふ

この100日間の裁判員たちの重圧を思う。年明け早々に選任手続きがあり、計36回の公判。結審後もひと月にわたって評議を続けてきた。選択した結論は死刑だった。 ◆首都圏の男性3人連続不審死事件の裁判は、木嶋佳苗被告(37)と殺害行為を結びつける…

天声人語 天下の春

季節の話題を書いて頂戴する便りに、日本列島の「長さ」を思うことがある。いつぞやも梅のことを書いたら、南国からは「とうに散った」、北国からは「雪中でまだ蕾が堅い」といただいた。東京の季節感ばかり書いて、お叱りを受けることもある。 ▼<北国の弥…

産経抄 憎まれっ子世にはばかる

「憎まれっ子世にはばかる」。北朝鮮の振る舞いを表現するのに、これほどふさわしいことわざはあるまい。「永遠の総書記」の遺訓だが、朝鮮労働党の第一書記に就任した正恩氏への祝砲だか知らないが、一両日中にも「人工衛星」と称する長距離弾道ミサイルが…

春秋 ミサイルと金正恩体制

一昨年死去した歌人、竹山広に一首がある。「体制といふ櫓(やぐら)にて微笑せる金正日がまた手をたたく」。「正日」だけ「正恩」と変えてみればいい。いまもそのままである。その北朝鮮で、三本の櫓に正恩氏がのっかる準備が着々進む。 ▼三本足の体制とは…

余録 善意の外交

「地獄への道には善意が敷き詰められている」。18世紀の英国の文人サミュエル・ジョンソン博士の言葉といわれる。前に小欄はこの言葉を引いて、鳩山由紀夫元首相の善意ではあっても責任感のそこが抜けたような言動に苦言を呈したことがある。 ▲ご当人には…

編集手帳 料理名「鳩山由紀夫元首相」

裏稼業に生きる主人公が内心つぶやく。<狼と食事をするときは、自分が客であるのか主料理であるのか、見極めるのが容易でない…>。日本でも評判を呼んだ推理小説、トレヴェニアン「シブミ」(ハヤカワ文庫)の一節である。 ◆賓客として招かれ、こちらはテー…

天声人語 肉を食べるということ

肉料理を書いてうならせる本は多い。近刊ではカナダの旅行作家、マーク・シャツカー氏の「ステーキ!世界一の牛肉を探す旅」(中央公論社)だろう。例えば神戸牛はこう描かれる。 ▼「牛肉ならではの甘くて木の実のような風味がしたものの、温かいバターでコ…

産経抄 無知の知?

いやはや恐れ入った。自分が任命した大臣を「無知」だと国会の場で公表した首相は、内閣制度が発足した明治18年に伊藤博文が初代首相に就任して以来、95代目の野田佳彦首相が初めてだ。 ▼野田首相は5日の参院予算委員会で、ミサイル(PAC3)と飛行機(…

春秋 日本企業のこれから

QCという訳語は製造業の社員なら知っているだろう。クオリティー・コントロール、品質管理を指す。この言葉が普及したきっかけは、企業の品質向上の事例を集めた雑誌「現場とQC」の創刊だ。50年前の1962年4月のことだ。 ▼この雑誌を参考に改善活動に…

余録 日本初の氷河

日本では雪氷学と訳される「グレシオロジー」は直訳すれば「氷河学」だ。19世紀から欧州の地理学者や物理学者らの間で氷河への知的関心が高まり、氷の性質や気象をめぐる学際研究が行われた。 ▲もっともその今日の最大の関心事は世界的な氷河の減少であろ…

編集手帳 春の嵐

「エオリアン・ハープ」を見たことがある。何年か前に訪ねた浜松市の楽器博物館に展示されていた。古代中国から中世ヨーロッパに伝わった弦楽器という。人の手によらず、風が弦を震わせる。 ◆音の高低も強弱も風まかせで”演奏”に巧拙はなかろうが、四季でい…

天声人語 アウンサン・スーチーの選挙からみるミャンマーの民主化

あれよあれよと民主化の進むミャンマーの選挙に、昔に住んだ芸談が思い浮かぶ。「客席に背中を向けるときは、ベロを出していても、客をなかせなけりゃいけない」と六代目の菊五郎は言ったそうだ。 ▼片や吉右衛門は「私は舞台で泣くときは、ほんとうに涙をこ…

産経抄 地獄から学ぶもの

いかにも腕白(わんぱく)そうな男の子3人が、神妙な面持ちで正座して聞き入っている。母親が読み聞かせているのは、「地獄」(風濤社(ふうとうしゃ))という絵本だ。先日、フジテレビ系列の「とくダネ!」が取り上げるまで、人気の高さを知らなかった。 …