mstk's diary

新聞コラム

産経抄 前田国交相の問責決議案

 岐阜県下呂市下呂温泉は草津や有馬とともに「日本三名泉」の一つに数えられる。飛騨川沿いに温泉宿やホテルが立ち並び、あちこちから湯煙が上がる。いかにも日本の温泉町らしい活気があり、テレビ番組でもしばしば紹介されていた。

 ▼その下呂市の市長選が告示される直前の今月初め、温泉街を仰天させる文書が市の建設業協会に舞い込んだ。立候補予定だった前民主党議員への支援を求めるものである。文書には何と、前田武志国土交通相の自筆のサインがあった。

 ▼選挙戦前とあれば、それだけでも公選法違反の疑いは強い。しかも「観光資源、水資源に大いに恵まれ…新たな試みが生まれてくることを期待せずにはおれません」とある。この候補を応援すれば、国交相が市の開発に協力してやる。そう受け取れかねないような文面だった。

 ▼当然のことながら、野党側は参院に問責決議案を出すという。前田氏は「名宛人や内容もチェックせず署名した」「秘書官に促された」などと弁明している。だがこんな「古典的な」言い訳が通用しないことなど、国会経験の長い前田氏ならお分かりのはずだ。

 ▼さらに言えば、ことは前田氏だけの問題ではない。民主党は先の衆院選で「コンクリートから人へ」を掲げ、土木事業などの見直しを公約した。群馬・八ッ場ダムの工事中止がその象徴だった。ところが、地元の要望を受けると昨年、あっさり工事再開にカジを切った。

 ▼そこへ、この市長選である。民主党政権の大臣が前民主党議員の候補者への応援を建設業界に依頼した。党は直接関与してないとはいえ、これもまた民主党の公約が「口先」だけだったことを、白状しているようなものである。