mstk's diary

新聞コラム

編集手帳 男性3人連続不審死事件に思ふ

 この100日間の裁判員たちの重圧を思う。年明け早々に選任手続きがあり、計36回の公判。結審後もひと月にわたって評議を続けてきた。選択した結論は死刑だった。

◆首都圏の男性3人連続不審死事件の裁判は、木嶋佳苗被告(37)と殺害行為を結びつける直接的な証拠がない。検察は3事件に共通する状況証拠を積み重ねて「犯人は被告以外には考えられない」との主張を展開した。

◆状況証拠については2年前、最高裁が「被告が犯人でなければ説明できないものがなければならない」と厳しい条件を示している。初動捜査で警察が、男性1人を自殺と見誤り司法解剖しなかった、などの失態も明らかになった。証拠の細部まで吟味し尽くした評議だったろう。

◆裁判員の苦悩に敬意を表しつつ、検察の論告には疑問を呈しておく。<夜晴れていて朝雪化粧なら、雪が夜中に降ったのは明らか>。状況証拠だけでも有罪にできると、雪に例えて言いたかったのだろうが、想像力で殺人を認定するわけにはいくまい。

◆「雪冤」という言葉が浮かぶ。自らの無罪を晴らす、の意味。冤罪を生まぬことが刑事裁判の鉄則である。