mstk's diary

新聞コラム

産経抄 憎まれっ子世にはばかる

 「憎まれっ子世にはばかる」。北朝鮮の振る舞いを表現するのに、これほどふさわしいことわざはあるまい。「永遠の総書記」の遺訓だが、朝鮮労働党の第一書記に就任した正恩氏への祝砲だか知らないが、一両日中にも「人工衛星」と称する長距離弾道ミサイルが発射される。

 ▼これまで二回打ち上げに失敗した北朝鮮の技術には、まったく信用がおけない。猛毒の燃料や破片が落ちてこないのか、飛行コースの下で暮らす住民は不安でいっぱいだ。自制を求める国際社会の声に、北朝鮮は聞く耳を持たない。

 ▼「はばかる」とは普通、遠慮する様子を指す。国民にまともな飲料を与えられず援助頼みの国には、こちらがふさわしい。「憎まれっ子」と結びつくと正反対の意味になるのは、「はびこる」から転じた誤用との説がある。

 ▼ミサイル問題で、北朝鮮に「誤用」を許しているのは、制裁強化に向けて関係各国の足並みが揃わないからだ。今回も中国をロシアは、穏健な対応を主張している。日本国内でさえ、いまだに北朝鮮を擁護する声がある。

 ▼「『北朝鮮脅威論』は、日米軍事同盟の変質強化に利用されている」「従軍慰安婦は、北朝鮮の拉致と同じ犯罪だ」。いずれも立派な肩書きをもつ学者の意見だから、驚いてしまう。

 ▼<地図の上朝鮮国にくろぐろと墨をぬりつゝ秋風を聴く>。きょう没後100年を迎える石川啄木による、韓国併合批判の歌と知られる。この歌を引用して、朝鮮半島の分断は日本の植民地支配のせいだと主張する人もいる。貧困のつらさが骨身にしみていた啄木は、熱狂的な愛国者でもあった。国民の生活を犠牲にして、先軍路線を突き進む北朝鮮の暴挙を許すはずがない。