mstk's diary

新聞コラム

編集手帳 中国のマクベス

 シェークスピア「マクベス」でマクベスその人が言う。<ひとたび悪事に手を着けたら、最後の仕上げも悪の手にゆだねることだ><第3幕、福田恆存訳)

◆推測されているように、不正蓄財の悪事に手を染めた以上は”仕上げ”も悪の手にゆだね、口封じの殺人を犯したのだろうか。疑惑の渦中にいるのは夫とその妻である。記事を読み、手を携えて王を殺害した武将マクベス夫妻を連想した方もあろう。

◆英国人の実業家(41)を毒殺したとして中国共産党重慶市党委の前書記、薄煕来氏(62)の妻(52)が逮捕されたが、犯行は薄氏の指示だった疑いがあるという。

◆薄氏は、重慶市に"薄王国”を築くほどの専横を極めた人である。権力者の横暴にチェック機能が働かない一党独裁の弱点を、事件はあぶり出した。「天安門事件(1989年)以来、党にとって最大の危機」と評した幹部の発言も報じられている。

◆犯行のあと、マクベスの耳を幻聴が襲った。<もう眠りはないぞ!マクベスが眠りを殺してしまった>(第二幕)。胡錦濤総書記以下、当首脳の面々も、安眠を博氏夫婦に殺された心境かもしれない。